相談

 私は、現在、個人事業主として、弟に手伝ってもらいつつ、従業員3名を雇用し、飲食店を経営しています。私には、子どもが3人おりますが、いずれも会社員で、独立して家庭を持って生活をしており、店の経営には何ら関与していません。もっとも、この店は、私が一代で築き上げた店ですので、いずれはこの3人の子どものいずれかに店を引き継いでもらいたいと考えています。

 現時点では、どの子どもに適性があるのか、また、店を引き継ぐ意思があるのか、明らかではありません。もっとも、私自身、体調が悪化してきており、いつ何が起こってもおかしくありません。私に万が一のことがあれば、一時的に弟に店を任せ、その後、子どもの適性や意思がはっきりした段階で、その子どもに店を引き継いで欲しいと考えています。後継者が決まっていない段階では、何もできないのでしょうか。店をしっかり子どもたちに引き継いでもらえるかが心配です。

回答

 このまま何もしなければ、ご本人に財産はお子さんが3分の1ずつ相続することになります。そうすると、遺産分割によって、事業に関する財産が分散してしまい、事業の継続が困難となる結果を招来しかねません。

 そこで、委託者をご本人、受託者を弟さん、受益者をお子さん3人とする信託契約を締結することが考えられます。そして、預金や不動産、機械、ノウハウなど事業を構成するすべての財産を信託財産とするとともに、買掛金や従業員給与などの債務については、受託者による債務引受をします。そして、ご本人が死亡するなどして事業を行えなくなったことを条件として、信託契約の効力を発生させることとします。また、弟さんが一定の時期までに残余財産受益者(信託が終了した場合、残った財産を受け取る権利がある者)を指定する旨を定め、指定された受益者が承諾することで信託を終了させることとします。

 そうすることで、万が一、ご本人が突然亡くなったとしても、弟さんが継続して事業を続けることができます。その後、弟さんが、お子さんの適性や意思を踏まえ、一定の時期までに後継者を選択することで、最終的にいずれかのお子さんが事業を引き継ぐことが可能になります。もっとも、後継者とならないお子さんの遺留分に対する配慮が必要になってくるでしょう。