相談

 私たち夫婦には,子どもがいません。現在,私が所有する自宅不動産に2人で暮らしています。私が亡くなった後は,妻に自宅不動産に住み続けてもらいたいと考えています。

私には,兄がいまして,兄は既に亡くなっていますが,その息子(甥)とは,懇意にしています。妻には姉が1人いますが,全く交流がありません。そのため,妻が亡くなった後は,私の甥に,自宅不動産を渡したいと考えています。私は何をしておいたらいいでしょうか。

 
 

回答

 まず,妻に自宅不動産を相続させる遺言を残しておくことが考えられます。兄弟姉妹には遺留分がありませんので,遺留分を心配する必要もありません。 こうしておくことで,妻に自宅不動産に住み続けてもらうという希望を叶えることは可能です。

 ただ,妻が亡くなった後にどうなるかというと,妻の法定相続人は妻の姉になりますので,妻が遺言書を残していなければ,自宅不動産は,妻の姉が相続することになってしまいます。妻が甥に自宅不動産を相続させる遺言を残してくれれば,甥に自宅不動産を渡すという希望も叶えることが可能です。

 ただ,妻が夫の親族である甥に渡したいという意思を持つことは多くなく,通常は,妻の協力は期待できないでしょう。
そこで,妻の協力が得られない場合や,妻が既に認知症で遺言能力がなく遺言書を作成できない場合に,家族信託を活用すべきです。

 また,遺言書は,新たに作成されたものが優先しますので,遺言書が新たに作成されてしまう懸念がある場合(例えば,夫が亡くなった後,妻の気が変わってしまうこともあり得る)に,確実に甥に自宅不動産が渡る仕組みを構築しておきたければ,家族信託を活用すべきです。