相談
私は、賃貸用アパートを有しており、その一室で一人暮らしをしています。妻は一昨年亡くなりましたが、妻との間に子どもが3人(長男・次男・長女)おります。
ですので、私が亡くなったら、私の遺産は子ども3人が相続することになると思います。
もっとも、私の遺産は、このアパートぐらいしかありません。このまま何もしなければ、アパートは子ども3人の共有ということになると思いますが、共有になると、管理・処分を巡って、子ども同士で争いが生じ、ひいてはアパートの有効活用がなされないのではないかと心配です。これまで、アパートの管理は、長男に手伝ってもらっていたので、このまま長男1人に相続させれば有効活用してくれると思います。しかし、残りの2人の子どもに相続させる財産がないので、2人にとっては不満が残ると思います。3人の子どもには、平等に財産を相続してもらいたいので、長男1人に相続させる方法は避けたいです。
何か良い方法はないでしょうか。
回答
民法上、共有物の管理行為(賃貸借契約の締結・解除など)は、共有者の持分の価格の過半数によって(民法252条1項)、共有物の処分行為(売却や大規模修繕など)は、共有者全員の合意によって(民法251条)決することとされています。
そのため、アパートが共有状態になると、共有者の過半数が合意しなければ、アパートの管理すらできなくなってしまいます。その結果、適切なタイミングで賃貸借契約の締結や売却をすることができず、アパートが有効活用できない事態も生じえます。
そこで、これを避けるため、委託者をご本人、受託者をご長男とし、アパートを信託財産とする信託契約を締結することが考えられます。そして、第一次受益者をご本人として、第二次受益者をお子さん3人にします。
こうすることで、ご長男にアパートの管理・処分権限を委ね、ご本人が生存中は、ご本人が賃料収入を得て、生活をしていくことができます。そして、ご本人が亡くなった後は、お子さん3人が、平等に賃料収入を得ることができます。そして、ご長男にアパートの管理・処分権限がありますので、誰とも協議をせずに、単独でアパートを管理・処分することができます。こうすることで、アパートの有効活用を実現することもできますし、お子さん3人が財産から平等に利益を得ることができるようになります。もっとも、ご長男にはアパートを管理する負担がありますので、ご長男に報酬を与えるなどの対応も考えられるでしょう。また、ご長男が死亡するなど、アパートの管理・処分ができなくなる事態に備えて、その次の受託者を選定しておくことも検討すべきでしょう。